学生時代にはアフリカのタンザニアを拠点に活動を行っていた森さん。
森さんの学生時代の活動や現在のキャリアとどのように向き合っておられるのかお話を伺いました。
森 優希さん EMIELD株式会社 代表取締役 三重県出身。龍谷大学政策学部卒業。大学ではSDGsの前身であるMDGsについて学び、「社会課題を経営の観点からどのように解決するのか」という課題に向き合い始める。学生時代にタンザニアを訪問したことがきっかけで、路上生活をする子供たちの自立支援(教育支援・職業支援)を行う団体を立ち上げ、50名のメンバーを集め、代表を務めた。前職では、東証一部上場の経営コンサルティングファームにて、SDGsビジネスモデルチームを立ち上げ、リーダーを務めた。
アフリカの貧困問題について学びたい
-森さんは、学生時代はどのような活動をされていらっしゃいましたか。
小学校6年生の時にテレビでアフリカの現状を見て、アフリカの貧困問題に関心を持ち始めました。私の日常の生活はすごい幸せだなと思う一方で、世界には色んな状況に置かれている人たちがいるということを知って、いずれ現場に行ってみたいと思いました。中学校や高校では日本国内でボランティア活動をしていました。ですが、アフリカにいきたいという思いから、社会課題の解決方法について学ぶことができる龍谷大学に進学し、アフリカについて学べるゼミに所属をしました。そして大学1年生の時に他のゼミ主催のタンザニアのスタディツアーに参加しました。
-タンザニアでは、どのような光景を目の当たりにしましたか。
タンザニアでは5千人以上の子供たちが路上で暮らしている地域にいきました。親が離婚してしまって貧困に陥っていたり、子供が都市に出稼ぎに来ていたり、再婚した新しいお父さんに暴力をふるわれて家を出てきたり、色んな環境下の中で日雇いで働いている子供たちがいるという状況を目の当たりにして、何か自分にできることをしたいと思いました。
今、自分にできることをやりたい
-スタディツアーに参加した後は、どのような活動をされていらっしゃいましたか。
大学1年生の時にスタディツアーに参加して、タンザニアの子どもたちを支援する団体を立ち上げました。当時はアフリカに特化した団体が他になかったので、「アフリカに行ってみたい」という関心のある人もいて、比較的すぐにメンバー50名が集まりました。
ボランティア団体の活動としては、資金調達を行い現地の支援の幅を広げたり、タンザニアの現状について啓蒙活動をしたり、現地の状況を知ってもらいたくて日本からタンザニアに学生を派遣するなどの活動をしていました。
最初は可哀想だからという感情が始まりだったのですが、タンザニアに実際に行ってからはタンザニアのことがとても好きになって、もっと知ってもらいたいと思うようになりました。
今思えばメディアでタンザニアのことが報道されることが少ないため、もっとタンザニアの魅力を発信したり、支援活動もインパクトの追求ができたんじゃないかなと思いますが、当時はボランティアの難しさを感じました。
今もタンザニアにはいずれ戻りたいと思っています。タンザニアで事業をするのか、支援をするのかはまだ決めていないのですが、子供の貧困問題に対する取り組みはずっと変わらずしたいと思っています。
より良い世界を作るために企業と向き合う
-森さんは、大学卒業後はどのように進路を選びましたか。
大学時代に行ったボランティア活動の経験を通じて、持続可能性と社会インパクトの追求が本当に難しかったと感じました。社会課題を解決してより良い世界を作るためには、企業と向き合う必要があると思い、コンサルティングファームに入社しました。いずれ起業しようと思っていたのですが、社会に対して思いはあっても経営に対する知識が当時はなかったので、勉強をしながら社会問題解決に向けた仕組みを作りたいと思いました。
-新卒で入社したコンサルティングファームでは、どのような経験を積むことができましたか。
入社当時は、1年目で社会人としての基礎を身につける、2年目はマネジメントができるようになる、3年目で戦略を作れるようになるという目標を立てて、働いていました。様々な経験をされてもらい、最終的にはSDGsビジネスモデルチームを立ち上げリーダーを務めました。
2050年までの自分のビジョンを決めている
-森さんはどうして起業しようと思ったのですか。
起業しようと決意したのは高校3年生の頃です。ボランティア活動に参画する中で、「寄付金の額が少ないと解決できることも小さい」ということに課題を感じていました。そして、「より社会的なインパクトを追求するためには何ができるか」と考えていたところ、社会起業家という存在を知りました。
そして、「起業し、未だ解決されていない社会課題を解決しよう」と決めました。2050年までの自分のビジョンを立て、具体的にやりたいこと、その上で解決していきたい社会問題を決めています。手段は時流に合わせて変えますが、私のミッションは小学校6年生の卒業文集に記載した頃から変わりません。
-森さんは現在どのようなビジョンを描いていらっしゃるんですか。
今、私はSDGs経営のパートナーシップ事業からスタートし、コンサルティングを提供しています。コンサルティングはプレイヤーではなく企業のサポートという立場になります。多くの方々に社会問題解決について関心を持っていただくために必要な事業だと思っています。
現在、SDGsに取り組む企業が増えてきています。しかし企業がSDGsを通じて、利益や新規顧客の獲得などさまざまな目標を追求する一方で、実際には社会課題について学ぶ機会が十分でないケースもあります。そうなると社内に取組みが浸透しないだけでなく、間違った方向へ進んでいくこともあります。だからこそ社会課題について正しい理解を促しながら、SDGsを進めることが重要です。私たちは、それをサポートする役割を担っています。
これからは、プレイヤーというポジションから、自社の事業を通じて社会課題を解決できる仕組みを作っていきます。そして、「社会課題を解決するために貢献したい」という熱い想いをもった人が集まる会社にしたいです。
-将来のビジョンを決めるために意識されていることはありますか。
中学生の時から、自分が悩んだ時に素直な気持ちを書きとめるノートを作っています。
進路や就職活動など自分がどのような判断軸を持って決断したのか、参加したボランティア活動で何を感じて、これからどう活かしていきたいのかをメモして、ファイリングしています。「私にはできないんじゃないかな」と自分の限界を決めず、まずはやりたいことを書き出しています。
そのノートを見返して、どのタイミングで、どういう判断軸で、何を決めて、どんな感性を大切にしてきたのかを振り返っています。
もちろん自分の限界を決めずやりたいことだけをあげても、実際にできるかどうかの整合性が大事なので、2050年までに実際に何をするのかということはエクセルにまとめて毎週見直すということもしています。
-ノートにまとめようと思ったきっかけは何ですか。
中学生の時に周りで困っている人たちを見て、自分の悩みは周りに比べてちっぽけに感じていました。「自分の中でまとまっていない悩みを周りに共有することは、どうなんだろう」と思い、まずは自分の中で整理しようと思ったことがきっかけでした。
悩んだときにはノートにいつも本音を書くようにしていて、自分を客観的に見ることを意識しています。
経営課題とSDGs課題解決を両立させたい
-森さんは起業されて、具体的にどのようなお仕事をされていらっしゃいますか。
企業の経営課題と社会課題の両面を解決できるサステナブル ビジネスモデルの構築支援をしています。企業のビジョンや経営課題を踏まえた上で、事業を通じてどのように社会課題解決を行い、企業価値を高めるブランディングに繋げる支援をしています。具体的には、投資家に評価されるSDGsの取り組みは何なのか、消費者がサービスを利用することでどのように社会課題解決に繋がるのか、エシカル商品を営業が販売しやすいようにするためにはどのようにすべきかなど、経済性と社会性を繋ぐ仕組みをつくります。
また、「SDGsに取り組みたい」という切り口だけではなくて、「営業に繋げたい」とか「新規事業を立ち上げたい」など、企業に寄り添い、事業・経営の課題を解決するだけでなく社会課題も解決ができるご提案をしています。SDGsに取り組みたい動機が、「営利を追求したい」というものであっても構いません。私たちとのプロジェクトを通じて、お客さまが、「本気で、SDGs に向き合いたい」という姿勢に変わることにやりがいを感じています。本気で向き合う人が増えれば、より社会課題解決も促進されていくと信じています。
-SDGsコンサルティングに携わる中で大変と感じることは何ですか。
伝えることが大変だと感じます。SDGsに取り組む理由は、投資家からの信頼や消費者の獲得など企業によって様々です。SDGsに取り組むきっかけが最初は社会問題解決ではなかったとしても、事業を通じて本当に社会問題解決に繋げたいと、マインドチェンジをしてもらうことが難しいです。
そのためには投資家や役員、営業など色んな人の立場に合わせて納得できるデータを用意することが重要だと思います。
今、自分にできることをやっていく
-ソーシャルキャリアを目指す学生へメッセージをお願いします。
まずは今、自分にできることをやっていくことが大切だと思います。
自分の関心がある地域を訪れて自分の目で見たり、話を聞いてみたりするという行動から起こしてみるといいんじゃなかなと思います。挑戦して失敗することを恐れたり、難しく考えすぎず、小さなことでいいから行動を起こすことを心がけてみてください。そこから見えてくる新しい景色があると思います。やりたいことが見つかれば、その後どのように実践していくのかの手段は掛け算のように広がると思います。
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