持続可能な開発目標(以下、SDGs)は、2001年~2015年までに目標達成を目指したミレニアム開発目標(以下、MDGs)の後継として国連で採択された国際目標になります。

本記事では、MDGsの具体的な内容について解説いたします。

1. MDGsとは

MDGsは、2001年~2015年までに達成すべき途上国を対象にした8つの目標です。達成期限である2015年までに一定の成果をあげましたが、すべての目標を達成することはできませんでした。

そのため、MDGsの課題の引き継ぎと、新たな課題が追加され、2015年の国連サミットでSDGsができました。

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2. MDGsができた経緯

1980年代には、開発途上国の経済の仕組みを市場経済メカニズムが機能させることで開発途上国の経済発展につながるという「構造調整政策」という考え方が主流でした。

しかし構造調整政策は、開発途上国の経済発展にうまくつながりませんでした。

経済協力機構の開発援助委員会(OECD-DAC)において、「21世紀に向けて:開発協力を通じた貢献」(DAC新開発戦略)が採択されました。その中で7つの国際開発目標(IDGs : International Development Goals)が定められました。

2000年9月に開催された国連ミレニアム・サミットにおいて「ミレニアム宣言」が採択され、のちに同宣言とIDGsを発展的に統合したミレニアム開発目標(MDGs)ができました。

3. MDGsの8つの目標

極度の貧困と飢餓の撲滅

ターゲット1.A1990年から2015年までに、1日1ドル未満で生活する人々の割合を半減させる。
ターゲット1.B女性や若者を含め、完全かつ生産的な雇用とすべての人々のディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を達成する。
ターゲット1.C1990年から2015年までに、飢餓に苦しむ人々の割合を半減させる。

普遍的な初等教育の達成

ターゲット2.A2015年までに、すべての子どもたちが、男女の区別なく、初等教育の全課程を修了できるようにする。

ジェンダーの平等の推進と女性の地位向上

ターゲット3.Aできれば2005年までに初等・中等教育において、2015年までにすべての教育レベルで、男女格差を解消する。

幼児死亡率の引き下げ

ターゲット4.A1990年から2015年までに、5歳未満の幼児の死亡率を3分の2引き下げる。

妊産婦の健康状態の改善

ターゲット5.A1990年から2015年までに、妊産婦の死亡率を4分の3引き下げる。
ターゲット5.B2015年までに、リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)の完全普及を達成する。

HIV/エイズ、マラリア、その他の疫病の蔓延防止

ターゲット6.A2015年までに、HIV/エイズのまん延を阻止し、その後、減少させる。
ターゲット6.B2010年までに、必要とするすべての人々は誰もがHIV/エイズの治療を受けられるようにする。
ターゲット6.C2015年までに、マラリアその他の主要な疾病の発生を阻止し、その後、発生率を下げる。

環境の持続可能性の確保

ターゲット7.A持続可能な開発の原則を各国の政策やプログラムに反映させ、環境資源の喪失を阻止し、回復を図る。
ターゲット7.B生物多様性の損失を抑え、2010年までに、損失率の大幅な引き下げを達成する。
ターゲット7.C2015年までに、安全な飲料水と基礎的な衛生施設を持続可能な形で利用できない人々の割合を半減させる。
ターゲット7.D2020年までに、最低1億人のスラム居住者の生活を大幅に改善する。

開発のためのグローバル・パートナーシップの構築

ターゲット8.A開放的で、ルールに基づいた、予測可能でかつ差別のない貿易および金融システムのさらなる構築を推進する。
ターゲット8.B後発開発途上国の特別なニーズに取り組む。
ターゲット8.C内陸開発途上国および小島嶼開発途上国の特別なニーズに取り組む。
ターゲット8.D開発途上国の債務に包括的に取り組む。
ターゲット8.E製薬会社との協力により、開発途上国で必須医薬品を安価に提供する。
ターゲット8.F民間セクターとの協力により、情報通信技術をはじめとする先端技術の恩恵を広める。

4. MDGsの成果と課題

成果
極度の貧困と飢餓の撲滅とHIV/エイズ、マラリア、その他の疫病の蔓延防止では、一定の成果をあげることができました。

極度の貧困と飢餓の撲滅(注1)では、「1990年から2015年までに、1日1ドル未満で生活する人々の割合を半減させる。(ターゲット1.A)」という目標を掲げていました。その結果として、極度の貧困に苦しむ人々の割合は、1990年には世界人口の約36%(約19億人)を占めていましたが、2015年には約12%(約8.4億人)に減少し、目標は達成されました。極度の貧困が多い中国やインドの経済発展が背景にあります。

HIV/エイズ、マラリア、その他の疫病の蔓延防止(注1)では、2000年から2014年までに世界の新規HIV感染者数は約35%減少し、大幅に改善されました。また、マラリアについては2000年から2015年までに全世界で約620万人以上、結核については2000年から2013年までに約3,700万人の命が救われたと推定されています。

課題
普遍的な初等教育の達成、幼児死亡率の引き下げ、妊産婦の健康状態の改善、環境の持続可能性の確保では、達成が困難な課題が残されています。

普遍的な初等教育の達成では、「2015年までに、すべての子どもたちが、男女の区別なく、初等教育の全課程を修了できるようにする。(ターゲット2.A)」という目標が掲げられていましたが、1990年に80%だった開発途上地域の就学率は、2015年には91%までしか上昇しませんでした。

幼児死亡率の引き下げ(注2)では、「1990年から2015年までに、5歳未満の幼児の死亡率を3分の2引き下げる。(ターゲット4.A)」という目標が掲げられていました。1990年は、年間1,270万人の5歳未満の幼児が死亡していました。2015年には年間590万人の5歳未満の幼児が死亡しています。改善はありましたが、3分の2に引き下げることはできませんでした。

妊産婦の健康状態の改善(注3)では、「1990年から2015年までに、妊産婦の死亡率を4分の3引き下げる。(ターゲット5.A)」という目標が掲げられていました。世界の妊産婦死亡率は、1990年には妊産婦10万人に対して385人で、2015年には妊産婦10万人に対して216人で、4分の3まで引き下げることはできませんでした。

環境の持続可能性の確保(注1)では、「2015年までに、安全な飲料水と基礎的な衛生施設を持続可能な形で利用できない人々の割合を半減させる。(ターゲット7.C)」という目標が掲げられていましたが、1990年の46%から、2015年には32%に減少するにとどまり、半減には至りませんでした。

5. MDGsとSDGsの違い

MDGsは、途上国を対象にした目標で、政府開発援助(ODA)などを中心とした対策がほとんどでした。しかし、SDGsは途上国だけでなく、先進国を含めたすべての国々を対象にした目標です。SDGsでは、政府のみならず、市民や民間企業が連携して、世界の社会問題の解決を目指すことが求められています。

6. 最後に

SDGsができるまでの経緯を理解することで、SDGsの重要性について再確認することができます。MDGsから分かる通り、世界の問題は地球市民である私たち1人1人が取り組まないと解決に至りません。

小さなことから世界の問題解決に向けて、行動を起こしていきましょう。

【参照】
注1:外務省, 2015年版 開発協力白書(閲覧日2023-04-06)
注2:ユニセフ(国連児童基金), ユニセフ・子どもの生存に関する報告書発表 5歳未満で亡くなる子ども 年間590万人に1990年の1,270万人から53%減少(閲覧日2023-04-06)
注3:世界保健機関(WHO)、ユニセフ、国連人口基金(UNFPA)、世界銀行、国連人口部, Trends in Maternal Mortality: 1990 to 2015(閲覧日2023-04-06)

【MDGsロゴ引用】
国連広報センター, ミレニアム開発目標(MDGs)の目標とターゲット(閲覧日2023-04-06)