2030アジェンダとは、2015年ニューヨーク国連本部で開催された国連持続可能な開発サミットの成果文書で、正式名称は、「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」です。

今回は、2030アジェンダに記載されている内容についてわかりやすく解説します。

1. 2030アジェンダができた経緯

世界では、様々な社会問題が溢れています。そのため、2015年ニューヨーク国連本部にて国連持続可能な開発サミットが開催されました。そして、その成果文書として2030アジェンダが作成されました。2030アジェンダには、持続可能な開発目標(以下、SDGs)ターゲットについて記されています。

MDGs

SDGsは、2000年に採択された国連ミレニアム宣言を基にまとめられたMDGs(ミレニアム開発目標)を引き継いでいます。MDGsとは、貧困や飢餓など、2015年までに達成すべき8つの目標を掲げ、達成期限となる2015年までに一定の成果をあげました。

しかし、MDGsは貧困や飢餓など途上国を対象にした目標であり、政府開発援助(ODA)などを中心とした対策がほとんどでした。そのためSDGsは、途上国のみならず先進国の社会問題にも取り組み、MDGsの課題の引き継ぎと新たな課題が追加されています。

2. 2030アジェンダの構成

2030アジェンダは、前文、宣言、持続可能な開発目標(SDGs)とターゲット、実施手段とグローバルパートナーシップ、フォローアップ・レビューで構成されています。

内容をすべて読んでみたいという方はこちらをご確認ください。
我々の世界を変革する: 持続可能な開発のための 2030 アジェンダ(仮訳)はこちら

3. 前文

SDGs解説

「前文」では、SDGsの17つの目標を構成する5つのP、すなわちPEOPLE(人間)・PLANET(地球)・PROSPERITY(豊かさ)・PEACE(平和)・PARTNERSHIP(パートナーシップ)について記されています。

PEOPLE(人間)
“我々は、あらゆる形態及び側面において貧困と飢餓に終止符を打ち、すべての人間が尊厳と平等の下に、そして健康な環境の下に、その持てる潜在能力を発揮することができる ことを確保することを決意する。”

PLANET(地球)
“我々は、地球が現在及び将来の世代の需要を支えることができるように、持続可能な消費及び生産、天然資源の持続可能な管理並びに気候変動に関する緊急の行動をとることを 含めて、地球を破壊から守ることを決意する。”

PROSPERITY(豊かさ)
“我々は、すべての人間が豊かで満たされた生活を享受することができること、また、経済的、社会的及び技術的な進歩が自然との調和のうちに生じることを確保することを決意 する。”

PEACE(平和)
“我々は、恐怖及び暴力から自由であり、平和的、公正かつ包摂的な社会を育んでいくこ とを決意する。平和なくしては持続可能な開発はあり得ず、持続可能な開発なくして平和 もあり得ない。”

PARTNERSHIP(パートナーシップ)
“我々は、強化された地球規模の連帯の精神に基づき、最も貧しく最も脆弱な人々の必要 に特別の焦点をあて、全ての国、全てのステークホルダー及び全ての人の参加を得て、再 活性化された「持続可能な開発のためのグローバル・パートナーシップ」を通じてこのア ジェンダを実施するに必要とされる手段を動員することを決意する。”

4. 宣言

「宣言」では、持続可能な開発目標いわゆる「人間が地球でずっと暮らしていけるような世界をつくるための目標」に関する課題について記載しています。
持続可能な開発とは「経済」「社会」「環境」の三つの側面においてバランスがとれ統合された形で達成すること、またミレニアム開発目標の未達成の課題に引き続き取り組むことを目指していると述べています。

脆弱な人々

子供、若者、障がい者(その内 80%以上が貧困下にある)、HIV/ エイズと共に生きる人々、高齢者、先住民、難民、国内避難民、移民を含む脆弱な人々の能力強化や特別なニーズに対する支援を強化すべく、国際法に照らしながら、更なる有効な措置及び行動をとることを目指しています。

食料安全保障

すべての人々は社会保護制度を通じて、基礎的な生活水準を享受するべきだと述べています。そのため優先事項として飢餓を撲滅し、食料安全保障を実現するとともに、あらゆる形態の栄養不良を解消することを決意しています。

開発途上国、特に後発開発途上国における小自作農や女性の農民、遊牧民、漁業民への支援を通じて農村開発及び持続可能な農業・漁業発展のために資源を注ぎ込むと述べられています。

教育

就学前から初等、中等、高等、技術、職業訓練等のすべてのレベルにおいて、性別や人種そして障がいなどに関係なくすべての人々が質の高い教育を提供すると述べられています。

保健UHC

身体的及び精神的な健康と福祉を増進するために、すべての人が適切な予防、治療、リハビリ等の保健医療サービスを、支払い可能な費用で受けられるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)と質の高い保健医療アクセスの達成を目指すと述べられています。

経済基盤

包摂的で持続可能な経済成長の継続のために、すべての国のために強固な経済基盤を構築するよう努めると述べられています。働きがいのある人間らしい仕事の普及、若者の雇用促進、女性の能力強化の促進、強制労働や児童労働の根絶が、強固な経済基盤の構築に繋がります。

持続可能な生産と消費

社会における生産や消費、サービスのあり方を根本的な変革をすると述べられています。政府、国際機関、企業、個人は、開発途上国における持続可能な消費と生産を促進するために財政的、技術的支援等を通じてより持続可能な消費・生産パター ンへ移行する必要があります。

移民

他国への移住は、各々の国の発展に大きく関連しているため、包括的な対応が必要だと述べています。特に開発途上国において難民を受け入れているコミュニティのレジリエ ンスの強化や移民が市民権のある国へ帰国するための移民の権利を強調し、国家は帰国する自国民が正当に受け入れられることを保証しなければならないということを想起しています。

一方的経済措置の禁止

各国は、特に開発途上国において経済及び社会の発展を阻害し、国際法と国連憲章に合致しないような一方的経済・財政・貿易措置の公布及び適用を行うことを慎むよう強く求められています。

気候変動

気候変動や環境破壊によって引き起こされた脅威に対して、解決に取り組むべきだと述べられています。世界の温室効果ガス排出削減を加速し、気候変動による負の影響に対する適応を促進するための国際協力が求められています。

天然資源、海洋、生物多様性等

社会的・経済的発展において、地球の天然資源の持続可能な管理が重要だと述べられています。そのため、大洋、海、湖の他、森林や山、陸地を保存し、持続的に使用して、生物多様性、生態系、野生動物を保護する必要があります。また持続可能な観光事業、水不足・水質汚染への取組を促進 して、砂漠化、砂塵嵐、浸食作用、干ばつ対策を強化することで、レジリエンス構築と災害のリスク削減に向けた取組も強化する必要があります。

都市発展、化学物質等

地域社会のつながりと安全の確保、イノベーションと雇用を促進するための都市や人間の適切な居住地を提供するために地方政府やコミュニティと協働すると述べられています。また、化学物質の環境に適正な管理と安全な使用、廃棄物の削減と再生利用、水とエネルギーのより有効な活用等を通じ、都市活動や人の健康と環境に有害な化学物質の負のインパクトを減らすと述べられています。

平和と安全

司法への平等なアクセスを提供し、人権の尊重、効果的な法の支配、効果的かつ責任ある制度に基礎をおいた平和で、公正かつ、包摂的な社会を構築する必要があると述べられています。

上記に述べられた世界の社会問題を国家や民間セクターなどがパートナーシップによって、解決に取り組むべきだと述べられています。

5. 持続可能な開発目標(SDGs)とターゲット

SDGs

「持続可能な開発目標(SDGs)とターゲット」では、SDGsの17の目標と169のターゲットが記されています。169のターゲットとは、17つの目標を達成するための具体的な数値目標を表しています。
SDGsの17の目標と169のターゲットの具体的な解説は、こちらをご確認ください。
【SDGs解説】SDGsの17の目標と169のターゲット

6. 実施手段とグローバル・パートナーシップ

グローバル・パートナーシップとは、国や組織を超えた2者以上が協力しあいながら、目標達成を目指すということを意味しています。「実施手段とグローバルパートナーシップ」では、国家財政、民間企業の活動、貿易、金融、技術促進など、あらゆる利用可能な資源を動員し、すべての目標とターゲットの実施を支援するための全世界の強い関与を促進すると述べられています。
国内のリソース、国内外の民間資金、国際開発協力、開発の牽引力としての国際貿易、負債及び債務持続性、体制的な課題、科学技術イノベーション、能力構築、データ、モニタリング及びフォローアップのすべてに関連している行動目標をアディスアベバ行動目標といい、このアディスアベバ行動目標がSDGsの実施手段になると述べられています。

7. フォローアップとレビュー

「フォローアップとレビュー」では、SDGsを達成するために、国内・地域・全世界の各レベルに分けたフォローアップとレビューの枠組みが必要だと記されています。フォローアップとレビューの枠組みを設けることで、2030アジェンダを達成するために効果的な国際協力を支援し、成功例の交換や相互学習を促進することができます。また、共通の課題や新たに対応が必要とされる課題への対処のための支援を動員することも可能になります。
目標とターゲットは、グローバルな指標によってフォローアップされます。
2030アジェンダと持続可能な開発目標のフォローアップとレビューを行う主要なプラットフォームとして、ハイレベル政治フォーラム(HLPF)が設置されました。フォーラムは総会の主催のもとに国家元首や政府首脳のレベルで4年ごとに開かれ、また経済社会理事会の主催のもとで毎年開かれます。

8. まとめ

2030アジェンダを読むことで、SDGsの背景や達成するための具体的な手段を知ることができます。ぜひ、SDGsについて知識を深めたい方は2030アジェンダを読んでみてください。

我々の世界を変革する: 持続可能な開発のための 2030 アジェンダ(仮訳)はこちら

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