海外は人生を変えるのか

「海外経験は人生を変える。」
そんな言葉を耳にすることがある。
当時の私は、どこか他人事のようにそれを受け取っていた。
英語もできないし、日本の方が安全だし、
わざわざ海外に行く必要はあるのか、と。
——1年前の私である。
本当はずっと海外に行きたかった。
でも、英語力がないことを理由に、その想いに蓋をしていた。
日本にいる限り、英語を使う場面は多くない。
世界的に見ても安全な場所である。
そうやって、自分を納得させていたのだと思う。
ただ、今振り返ると、その考えは少し甘かったのかもしれない。
——当時の自分にそう言いたくなる。
少しでも海外に行きたい。自分を変えたい。
そんなかすかな衝動を抱いたのなら、どうかその気持ちを捨てないでほしい。
人生は、結局のところ
この物語は、「英語さえ無ければ」そう言われ続け、
長いあいだ自分の可能性を疑い続けてきた私が、
それでも世界に手を伸ばした、
人生を賭けた転機の記録である。
では、なぜ私が海外に行く決断をしたのか。
私が参加を決めた理由

英語が苦手になってしまったあの日をきっかけに、
私は海外への興味を意識的に遠ざけていた。
学校でも家でも「英語ができないキャラクター」を演じ、笑顔の裏では悔しさがにじむ日々を送っていた。
一種の自己防衛だったのだろう。
そうすることで、できない自分を正当化し、傷つかないように守ってきた。
踏み出さない自分を納得させる理由を、いくつも並べていたのかもしれない。
少しずつ始まっていた就活を機に、自己内観を徹底的に行った。
その中で、ふと立ち止まる瞬間があった。
本当にやりたいことは何なのか。
すべてを投げ出したとき、心の底に残るものは何なのか。
そしてもう一つ、
これ以上、英語から逃げたくない。
その気持ちが、静かに、でも確かに胸の中にあった。
費用や英語力、環境の変化への不安など、葛藤は数えきれないほどあった。
正直、全部が不安だった。
そんな中で出会ったのが、
「英語力不問の海外インターン」という選択肢だった。
海外未経験の人間が一人で渡航するのは簡単ではない。
準備にも、情報収集にも限界がある。
それでも、このインターンは、
私が抱えていた不安をひとつずつ丁寧に解消してくれた。
「もしかしたら、ここから変われるかもしれない」
そう思えた瞬間だった。
インターンで得られたこと
まず一つは、経験としての成果である。
私はフェアトレードのコーヒーのマーケティングインターンに参加し、
その取り組みを評価していただき、MVPを受賞した。
ただ、特別なことをしたという実感はあまりない。
目の前の人に丁寧に向き合い、必要だと思うことを一つずつ積み重ねただけだった。
振り返れば、評価されたのは派手な成果ではなく、
“相手の立場を想像し、求められる前に動く姿勢”だったのだと思う。
当たり前を積み重ねることは簡単ではない。
けれど私は、その当たり前を誠実に続けることだけは、決して手放さなかった。
もう一つは、仲間と呼べる人たちの存在だ。
異なる価値観を持つ人たちと共に過ごした日々は、
私にとってひとつの“居場所”になった。
これまでにもリーダーとして人をまとめる経験はあった。
しかし、ここまで自然に肩を並べ、同じ方向を見て歩ける関係は初めてだった。
言葉にしなくても伝わる安心感。
誰かの弱さを責めるのではなく、そっと支える優しさ。
その空気が、私を何度も救ってくれた。
帰国後も、私たちは変わらず集まり、語り合い、笑い合っている。
あの場所で出会った人たちは、今も私の人生を静かに支えてくれている。
そして何より大きかったのは、
自分の中に一つの軸ができたことである。
人と関わること
私は、人と話すことが好きだ。
当たり前のようでいて、それにちゃんと気づけたことは大きかった。
日本語でのコミュニケーションには自信があったが、英語となると別なのではないか。
海外では通用しないのではないか
——そんな不安もあった。
でも実際に行ってみると、思っていたよりも何とかなる。
言葉が完璧でなくても、たくさんの人と関わることができた。
カンボジアで友人ができたことは、その一つの経験だと思う。
あのとき、どうしても自分の言葉で伝えたかったのに、うまく言葉が出てこなかった。
だからここで、改めて伝えたい。
I’m so lucky to have met you.
ខ្ញុំមានសំណាងដែលបានជួបអ្នក។
いつか必ず、直接伝えに行くつもりだ。
この経験を通して、一つの目標を持つようになった。
「世界中の人と仲良くなる」
夢物語かもしれない。
それでも、自分の言葉で話したい。
この目標があるからこそ、
あれだけ遠ざけていた英語にも向き合おうと思える。
そしてもう一つ、このインターンでは人の優しさに多く触れた。
全員で協力したインターンのメンバー。
挑戦を応援してくれた友人。
ずっと心配してくれた家族。
そして、私が飛び込むことに賛成し、支えてくれた母。
この記事を通して、改めて感謝を伝えたい。
最後に

海外は人生を変えるのか。
その問いの答えは、あなたが今踏み出そうとしている一歩の中にある。
少なくとも、私にとっては一つの転機になった。
ただ、それは海外に行ったことそのものというよりも、
自分の本音に向き合い、行動したことに意味があったのだと思う。
世界を変えるような大きなことは成し遂げられないかもしれない。
それでも、私は出会ってくれた人をすこしでも笑顔にできる人でありたい。
もし今、少しでも迷っているのなら、
その気持ちをなかったことにしないでほしい。
人生は、行動した分だけ、少しずつ広がっていくから。
自分を信じて。
2026.05.10 上遠野 祐歩
